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紅茶の血糖値上昇抑制に関する研究結果

高分子ポリフェノールを含むジャワ島産の茶葉を100%使用した無糖紅茶飲料を食事とともに摂取するヒト試験を行ったところ、紅茶が食後血糖値の上昇抑制に効果的であることが明らかになりました。

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Functional Foods in Health and Disease Vol.11, No.5, pp222-237 (2021)
https://ffhdj.com/index.php/ffhd/article/view/791/1423

背景

国際糖尿病連合(International Diabetes Federation)の発表1)によると、2019年には世界で4億6300万人が糖尿病を患っており、2030年までに5億7800万人に達すると予測されています。
糖尿病を予防し、その合併症を遅らせるためには、食後の血糖コントロールが重要です2)
シンガポールにおける調査では、紅茶を飲む人は飲まない人に比べて糖尿病のリスクが14%低下することが報告されています3)。またスリランカの伝統医療では、初期、中期の糖尿病患者に1日6~10杯の紅茶を飲むことを推奨しています4)

そこで、食後の血糖コントロールに対する紅茶の影響を調査するため、ヒト試験を実施しました。試験には、ジャワ島産の茶葉100%の無糖紅茶飲料(以下、「ジャワ紅茶」とします)を使用しました。 1). International Diabetes federation, diabetes Atlas 9th edition,http//www.diabetesatlas.org/en/sections/demographic-and –geographic-outline.html
2). Bonara, E, Muggeo, M. Postprandial blood glucose as a risk factor for cardiovascular disease in type II diabetes; the epidemiological evidence, Diabetologia, 2001, 44: 2107-14.
3). Odegaard A O, Pereira MA, Koh WP, Arakawa K, Lee HP, Yu MC. Cofee, tea and incident type 2 diabetes: the Singapore Chinese health study. Am J Clinic Nutr. 2009; 88: 979-985.
4). Abeywickrama KRW, Ratnasooriya WD, Amarakoon AMT. Oral hypoglycaemic, antihyperglycaemic and antidiabetic activities of Sri Lankan broken orange pekoe fannings grade black tea in rats. J. Ethnopharmcol. 2011;135: 278-286.

ジャワ紅茶の糖質分解酵素に対する活性阻害作用

私たちは食事から摂取したでんぷんやショ糖などの糖質を、小腸で糖質分解酵素によりブドウ糖や果糖等の単糖に分解してから吸収しています。従って、糖質を含む食事をすると血糖値が上昇します。しかし、急激な血糖値の上昇や血糖値が高い状態が続くと血管を傷つけ、様々な疾病の原因となります。

ジャワ紅茶が糖質分解酵素にどのように影響するのかを調べた結果が図1です。
でんぷんを分解するα-アミラーゼ、マルトースを分解するマルターゼ、そしてショ糖を分解するスクラーゼ、いずれの酵素に対してもジャワ紅茶は濃度依存的に活性を阻害することがわかりました。

図1 ジャワ紅茶の糖質分解酵素に対する影響

食事から摂取したでんぷんはアミラーゼにより分解されマルトースを生じます。さらにマルターゼで分解されてグルコースになり吸収されます。ガロイル基を有するジャワ紅茶中の平均分子量30,000の高分子ポリフェノールがアミラーゼを、さらに平均分子量13,000の高分子ポリフェノールがマルターゼを阻害してブドウ糖の生成を遅らせます。その結果、小腸からのブドウ糖の吸収が穏やかになり、血糖値の急激な上昇を抑えると考えられます。

図2 ジャワ紅茶の食後血糖値上昇抑制の作用機序

ジャワ紅茶飲用による食後血糖値への影響

血糖値が正常な人46名(平均年齢 44.7歳(24~66歳)、平均BMI 22.4±3.4、平均空腹時血糖 83.6±4.5)を対象にジャワ紅茶飲用による食後血糖値の変化を調べました。
被験者を二群に分け、試験前6時間以上絶食した後、空腹時血糖値を測定しました。その後200gの米飯と、群Iの人はジャワ紅茶を、群IIの人はジャワ紅茶と外観、香りで区別のつかないプラセボ飲料を200ml飲んでもらい、食後120分まで30分毎に血糖値およびインスリン値を測定しました。1週間のウオッシュアウト期間を空けて、群Iと群IIを入れ替えて同様の試験を行いました(ランダム化二重盲検プラセボコントロールクロスオーバー試験)。
その結果、図3に示すようにジャワ紅茶を飲むことによって食後血糖値の上昇がゆるやかとなり、またピーク時の値も低くなりました。さらにインスリンの値もジャワ紅茶では有意に低下しました。

【 ジャワ紅茶の飲用による食後血糖値の経時変化 】

(データ:Funct.Foods Health Dis. 2021; 11(5): 222-237)

【 ジャワ紅茶飲用後の血糖値および
インスリンの経時変化曲線下面積 】

(データ:Funct.Foods Health Dis. 2021; 11(5): 222-237)

図3 ジャワ紅茶飲用による食後血糖値およびインスリン値への影響

結論

高分子ポリフェノールを含むジャワ紅茶は、糖類分解酵素であるα-アミラーゼ、マルターゼおよびスクラーゼを阻害しました。これはジャワ紅茶に含まれるガロイル基を有する高分子のポリフェノールによるものと考えられます。これにより摂取した糖類の分解が抑制され、急激な血糖値の上昇を抑える働きをしたと考えられます。

高分子ポリフェノールを含むジャワ紅茶は、コップ1杯(200ml)を食事とともに飲むことによって健康維持に役立つ可能性が示されました。